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理学療法士のoutputブログ

『12人のクライエントが教えてくれる作業療法をするうえで大切なこと』をPTが読んだ感想

私は11年目(令和元年現在)の理学療法士ですが、この

『12人のクライエントが教えてくれる作業療法をするうえで大切なこと』(

齋藤佑樹:著) を読んで、

自分のセラピストとして振り返ることと、これからの仕事に対する姿勢を考えさせられ、

何より体の芯が熱くなったので、内容を少し紹介しようと思います。

著者プロフィールなど 齋藤佑樹の研究室 on Strikingly

 

 ※記載している内容は著書の一部であり、引用部と私個人の解釈を合わせて記載しています。全文を引用する訳にはいきませんので、抜粋した内容が著者の意思に反する場合もあるかもしれません。その点も踏まえてご理解の上、ご覧いただければ幸いです。また、少しでもご興味いただければ、本書をお読みいただく事をお薦め致します。

 

 
 


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目次

 

この本について

本の内容としては、作業療法ジャーナルに掲載された連載のコラム

「ひとをおもう」に加筆・修正されたものです。

12人の実際にいたクライエントと、作業療法(アプローチ)について書かれています。

そこから、クライエントを診る上で大切なことが、細かく丁寧に解説されています。 

臨床を行う上で、重要になる

・よりそう

・その人らしさ

・個人の尊重

QOLとは

・関係性

などなど

これらのワードは大切だとわかっていても、なかなか詳しく教えてもらう機会も少なく、日々私自身モヤモヤする気持ちがあると感じています。

 

そんな悩みを解決する糸口を見つけてくれるである

臨床を行う上で大切な”向き合う気持ち”が、この本には描かれています。

 

そんなことが書かれている

『12人のクライエントが教えてくれる作業療法をするうえで大切なこと』

から、特に私が心打たれたところをいくつか抜粋し、自身の思うことも交えながら紹介していきたいと思います。

 

自立とは

自立とはなんでしょうか?

一人でできること?

限られた環境で、限られた用具を使い行えれば良いの?

目標をADL(日常生活動作)の自立を目指すと思います。

自立したとしても、それが福祉用具を使い、環境を整えて、時間が通常の2倍もかけてできたとしたらそれは自立でしょうか?

脳梗塞により中等度の右麻痺を呈し、回復期リハ病棟に入院したサキさん。「食事」動作は入院当初は左手スプーンを使用して摂食動作は自立。数週間後には、右手で自助具の箸を使用した食事が可能になりました。

しかし、サキさんの食事には解決すべき大切な課題が残されていました。

サキさん「私は仲のいい友人が3人いまして、毎月1回、みんなでオシャレをして、雰囲気の良いお店で4人で食事会をするのが恒例行事なんです。食事に行くお店は和食の店が多いので、できれば自助具を使用しないで普通のお箸で食事ができるようになりたいんです。最初に自助具を使って右手でご飯を食べられたときは、本当に嬉しかったんです。でも正直いって、今使っている自助具を友人との食事会で使用する気持ちにはどうしてもなれなくて・・・」

すぐに私はプログラムを修正しました。

食事については、所作等審美的な側面も重視しながら、左手で通常の箸を使用するための練習を強化しました。

無事自宅へと退院。現在でも友人との食事会を継続しています。

 

12人のクライエントが教えてくれる作業療法をするうえで大切なことより一部改変し抜粋

私はゴールをいつでも「歩行」や「食事」、「更衣」、「トイレ」といった結果においていました。

杖や装具を使用してでも、歩けたらそれで良いじゃないか。何処かへ行く、排泄をトイレでする、これらの目的を果たせるならば、やり方にこだわる必要はない!というように考えていました。

しかし、当事者はそうではありません。

目的を果たすためにどうやってやるのか。どのようにやりたいか?

行動そのものの過程が重要になってくる場合も多いです。

それはそうです。それが人間なんです。

あなたがもし、結果重視なのであれば

「できれば良い方法」から「満足する方法」へ考え方をシフトしないといけないかもしれません。

 その為にも関係性が重要になってきます。

クライエントがセラピストに対して、

本当に想っていることが言える、遠慮せずに、伝えられる。

その為にセラピストは、大いなる技術自信信頼を得ないといけません。その上で相手を尊重する関係性が大事だと思います。

 

「問題」解決とは誰の「問題」 

認知症の方はしばしば問題行動をとります。

でも、よく考えてみてください。

それは誰の問題ですか?

 

本人の健康を害するような問題もあります。

職員の業務上の問題もあります。

後者の場合、当事者の本意を無視していませんか?

「ヨシさんが最近厚着をしています」カンファレンスの話題はヨシさんの季節外れの厚着をどう”やめさせるか”です。確かに今日のヨシさんは肌着3枚セーター2枚の、計5枚の衣類を身につけています。(8月上旬)

おそらくヨシさんには、私たちとは異なる世界が見えているはずです。

1日に何度もヨシさんのもとへ通うようになって数日、私は思い切って訊いてみました。「しかしヨシさん、毎日寒いですよね」

ヨシさん「あんなに雪が積もっているんだから当たり前だ」

ヨシさんの視線の先に目を向けると、ヨシさんはおよそ30m先の、ラウンジの奥にある職員のミーティングスペースを見つめていました。前面がガラス張りでできたミーティングスペースは、昼間は強い日差しが差し込む為、真っ白いロールカーテンが下されていました。8月の強い日差しが外から照りつけるロールカーテンは、まるで真冬の晴れ間に雪景色を眺めた時のように、眩しいほどに白く光っています。重度の認知症を抱えたヨシさんにとって、おそらく今日は真冬でした。

ロールカーテンが見えないように、パーテーションを置くことに加えて、毎日2回、短時間の散歩をプログラムに追加しました。季節の話題に触れたり、草花の話をしながら施設の周囲の散歩そしました。

プログラム変更後、ヨシさんは厚着にこだわらなくなり、季節にあった相応の格好で日々を過ごすことができるようになりました。

 

12人のクライエントが教えてくれる作業療法をするうえで大切なことより一部改変し抜粋

 もしも、厚着を防ぐ為に服を預かったりしていたらどうなっていたでしょうか?見た目は解決していたかもしれません。

しかし、ヨシさんの気持ちは問題だらけです。

想像してみてください、真冬に薄着しか渡してもらえない状況を。

なぜ??怒り悲しみ、とにかく負の感情に襲われることは間違い無いでしょう。

 この他にも心当たりはありませんか?

・夜間にゴソゴソとして危険な為、睡眠薬を導入する。

・トイレは頻回で、「さっき行ったばかりですよ」と我慢してもらう。

・食事量が少ないから、介助で食べさせる。

 

 などなど

 

一見その方のためを思って対処を行なっているようですが、

結局は目の前の現象にしか着目していません。

当事者はその行動をとる理由があります。

なぜ?そのような行動を取るのか、

その理由を深く深く追求することが大事です。

真の理由はわからないこともあるかもしれません。

ただ、じっくりと観察し、アセスメントをとり、信頼関係を築いたうえで、フラットな目線でその方を評価した時、真の理由が見えてくると思います。

その理由を多くの職員で共有し、問題解決に向かうことが大切だと思います。

 

それは誰のためのリハビリ

おそらく多くのセラピストは

助けたい、救いたい、誰かの役に立ちたい!

といった、誰かの為になりたいと思って仕事をしているかと思います。

しかし、思いが強すぎるためか、初心を忘れてしまうのか、

クライエントを置き去りにしてしまっていることがあります。

私は週2回、長期療養病棟に入院しているクライエント役20名を対象に40分間のレクリエーションを提供する役割を担っていました。

ある日、私は科長に相談しました。バリエーション豊かに様々なプログラムを提供できるようになりたい。皆で盛り上がることだできるプログラムを提供したい。でも今の自分はそれができていない。私はその時の気持ちを正直に伝えました。おそらく私は、課長に相談すればきっとプログラムを考えるコツを教えてくれるのでは無いか、そんな淡い期待を抱いていたのでしょう。しかし科長から帰ってきた言葉はm私が期待したそれとは全く異なるものでした。

「患者さんたちは毎回違うレクをしたいの?あなたが毎回違う事をしたいの?患者さんたちはワイワイ盛り上がりたいと思ってるの?あなたが場を盛り上げたいの?」

クライエントのことを考えていると思いながら、実は私の関心は、自分がレクリエーションをうまく提供できるかに向いていたのでした。

 

12人のクライエントが教えてくれる作業療法をするうえで大切なことより一部改変し抜粋

 まさにこれと同じようなことはよくあるのでは無いでしょうか。主役はいつだって目の前の方のはずです。

目新しい方法やいつもと違うアプローチ、それは誰が望んでいるのでしょうか?

いい格好をしたいだけか、できると思われたいからか、そんな風にやっている時はありませんか?

クライエントの主観的世界を想像し、本当に望むことは何なのか?

これもまた、相手を想い、よく観察し、評価する。そこから真に必要なことを提供する。

主役はいつだって目の前の方だからです。

 

私はPTなんだけどね

私(ブログ管理者)はPT(理学療法士)です。自称、OT(作業療法)推しPTです。

新人の頃にOTの学会発表に行きました。(2009年ごろ)

そこで、『ALS疾患の方をパチンコに連れていく』と言う症例発表を聞いた時に衝撃を受けたことを今でも覚えています。

私は「医療者たるものが、パチンコなどと言う副流煙満載のギャンブル場にクライエントを連れて行くのか?しかも大分と無理をしてでも。諦めたほうが良いだろうそれは」とタイトルを聞いたときは衝撃的でした。

しかし、その中身は願いを叶える為に全力を尽くしてサポートする、これが真のQOLなんだと感銘を受けたのです。

そこから、同期のOTとの交流やOTの勉強会にも積極的に行くなど、OTの見えているものを学ぼうと必死に頑張っていました。

おそらくPTの考え方だけでは、今の私のリハビリは成り立っていないと思います。

兎にも角にも、私は作業療法というものが大好きであるのです。(もちろん理学療法も好きなんですけどね)

 

まとめ

12人のクライエントが教えてくれる作業療法をするうえで大切なことを読んで、

今までのセラピスト人生を色々と思い出し、反省することだらけでした。

ただ、これを機会にこれから、この本に描かれていることを大切に

リハビリテーションと向き合っていきたいと思います。

この本は、リハビリ職を目指す学生の方や、新人の理学療法士の方、今のリハビリへの自身の姿勢に対して悩んでいる方などにおすすめしたい一冊です。

 

 

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