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理学療法士のoutputブログ

認知症短期集中リハビリテーション実施加算「日々のくらしにつなげる認知症リハビリテーション実践ガイド 」を読んで②

前回の続きで、

認知症短期集中リハビリの実際のプログラムと事例について紹介していきます。

前回記事↓↓

www.rabichange.com

老健公益社団法人 全国老人保健施設協会) 編の、

「日々のくらしにつなげる認知症リハビリテーション実践ガイド 」
ご存知ですか??

認知症短期集中リハビリテーション実施加算を取っている施設や、

これから取ろうとしている施設の方は必読です!!

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目次

 

認知症リハビリテーションプログラムについて

認知症短期集中リハビリテーションというくらいですので、認知症に対するリハビリテーションを行わなくてはいけません。

認知症に対するリハビリテーションとはなんなのか?

目指す効果と、それぞれのプログラムについて、見ていきたいと思います。

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出典:日々のくらしにつなげる認知症リハビリテーション実践ガイドpⅥ

回想法

回想法はBPSDや抑うつに対しての効果が期待されます。

残念ながら、記憶工場の効果は確実でないというシステマティックレビューもあるため、留意が必要です。特に本人が好まない場合には、効果は期待されないということが考えられます。

ちなみに回想法の方法等については以下も参考にしてみて下さい。

www.tyojyu.or.jp

回想法の有効な実践法

過去のことはいつでも幸せとは限りません。

ネガティブな記憶を思い出す可能性もあります。

それでも、その方はそれを乗り越えてきた過去がありますので、

傾聴し、肯定的な意味付けができるように支援してくことが有効です。

 

昔の道具を使用する方法は、手続き記憶が残っており、そこからエピソード記憶も喚起されていくことが期待されます。

さらには、道具の使い方を若い方に教えることで、本人様の自信にもつながるので、

大変有効な手段と言えます。

回想法により、過去を思い出すことの意味

認知症で記憶力が低下すると、現在と過去が分断され、今の自身の存在そのものに不安を感じてしまうこともあります。

過去を思い出すことで過去との連続の上に現在の自分自身の存在を実感する事になり、そこに大きな意味があります。

また、同じ顔を経験した方とも話をする事(あの映画が好きだった あの歌が好きだったことなど)で、他者との関係性(社会性)を確認する事にもつながります

個人回想法(1対1)か集団回想法(複数名)か

どちらで行うかは、対象者へのアセスメントからと目的により異なってきます。

1対1で行う場合

本人が本当に聞いて欲しいと思っている事、理解している事に耳を傾ける事ができます。

集団に入る事が苦手な方もいている事や、デリケートな過去の記憶にもアプローチできます。特に信頼関係の低いはじめは、ゆっくりと傾聴する事が必要ですので、個人回想法から始める事が良いです。

複数名で行う場合

他者との関係性にクローズアップされます。

自分自身が集団で話すことはもちろんですが、他者の話を聞くことで思い出し、自らの発言が増える場合もあります。

また、楽しく思い出を語ることで、「受け入れられている」「認められている」と思う事ができれば、それ自体がQOLの工場になります。

 

見当識訓練

見当識とは、現在が何月何日何時なのかといった「時の見当識

自分がどこに居るかなどの把握である「場所の見当識があります。

時の見当識

よく「今日は何月何日ですか?」と質問をする事があると思いますが、

こんな簡単なことを答えられないと、自尊心を傷つける可能性があります。

数字が答えられても、大きな意味はありません。

それよりも大切なことは

今の季節を外の景色や気温などから感じること、朝・昼・晩のいつかがわかること。

こういった時の流れを感じて思い出す事が大切です。

 

また、日付に関してはカレンダーにより行い、その際にはその人に関連のある記念日(家族の誕生日など)や行事ごと(孫に会う日 孫の発表会など)を記載すると良いです。それらについて会話を行い、生活の流れを「実感」してもらう事が大切です。

場の見当識

ここの場がどこなのかといった、名前を当てる事に意味はさほどありません。

それよりも。ここで自分が何をするのか、ここに居ると楽しくなるのか、安心できるのか、空間とその場にいる他の人たちと自身の関係性を明らかにして、一緒にここにいたいとわかってもらう事が大切なのです。

記憶訓練

人の名前を覚える、パズルを行う、神経衰弱、家事を手伝う(手順を覚える)など、

記憶訓練には様々な方法がありますが、大切なことは楽しんで行ってもらう事です。

ただでさえ記憶力が低いので、課題が難しくなるとモチベーションは下がりますので、楽しい課題を与える事が大切です。

音楽療法

エビデンスとしては十分ではありませんが、臨床経験上、音楽が与える効果を実感しているリハビリテーション専門職は多いと思います。

これもまた、様々な方法がありますが、本人の好きなものを楽しんでもらう事が大切です。

音楽療法の様々な方法の例を挙げていきます。

・カラオケを歌う(聴く)

・リズムに合わせて運動を行う

・楽器を演奏する

・BGMとして使う

・詩吟や民謡を披露する

など色々とできる方法はあるかと思います。

運動療法など

頭を良くしたいなら、体を動かせ というほど認知症の予防にも運動は有効です。

散歩などによる有酸素運動は、前頭葉の昨日工場に関連するという報告もあります。

その他にも体操による「空間認知能力の向上」など様々な効果が期待できます。

他にも方法や効果について↓リンクも参照にしてください。

www.tyojyu.or.jp

また、コグニサイズといった体を動かしながら認知課題を行う、認知機能向上を目的とした運動プログラムも有効的です。

コグニサイズとは国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。英語のcognition (認知) とexercise (運動) を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)と言います。Cognitionは脳に認知的な負荷がかかるような各種の認知課題が該当し、Exerciseは各種の運動課題が該当します。運動の種類によってコグニステップ、コグニダンス、コグニウォーキング、コグニバイクなど、多様な類似語があります。コグニサイズは、これらを含んだ総称としています。

国立研究法人 国立長寿医療研究センターホームページより引用

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」 | 国立長寿医療研究センター

 

手工芸・アートなど

 手芸については、編み物、刺し子、折り紙、箱作り、などがあり、

いずれも空間認識、注意、手と目の協調、手指の巧緻運動などの要素を含む活動です。

作るだけに終わらず、目標を定めることも大切です。プレゼントする事を目的としたならば、他者との関係性や社会性にも繋がります。

作るだけに終わらず、自分の存在を確かめ、モチベーションを上げる事が大事です。

絵画やちぎり絵なども同様になります。

その人が好きなことやできることを提供し、楽しんで取り組んでいただく事が最も重要となります。

 

言語・コミュニケーション訓練

方法として、俳句、しりとり、ことわざ、歌、書字などがあります。これらは、ただ単に言葉を話す(書く)だけでなく、季節や風景、昔を思い出すなどの刺激によって生み出されます。その他の訓練と組み合わせて行うことで、より効果的な方法と言えます。

認知機能賦活訓練

読み、書き、計算、数字探しなど騎乗の課題が多くなりますが、これもまた本人が好きで楽しんで行える事が必要です。ゲーム性を強くしたり、会話をすることや時にはできた事に褒めることも必要です。

料理・園芸

料理は複雑な工程があるために、認知症の進行によって難しくなってきます。

それでも「切る」「炒める」など部分的な作業は可能な場合が多いです。

グループで各工程を振り分ける事で、実施できる場合もありますので、他者ともコミュニケーションをとり、想いを共有できるような複数名による料理の実施も効果できと言えます。

園芸は楽しみが多様です。土に「触れる事」から始まり、植物の成長、収穫する喜びや、それを食べる事の楽しみ、誰かに上げる交流など、様々な要素があり、有効的であります。

 

訓練で大切なことは、その人自身にあった、楽しめるプログラムを用意する事が何よりも重要です。

 

薬物療法について

認知症薬はありますが、薬には副作用はつきものです。

特に長期化すると、副作用の影響が大きくなってきます。

薬の効果と副作用を知り、本当に必要かどうなのか、状態を見て医師に打診することも必要になってきます。

各薬物の効果と注意点について

1、アセチルコリンエステラーゼ(AchE)阻害薬ードネペジル(アリセプト)およびガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチ)ー

アルツハイマー認知症レビー小体型認知症に適応がある抗認知症

神経伝達物質アセチルコリンが脳内において減少しているため、これを増やすことで脳内を活性化する作用があります。

効果:意欲低下、無関心、抑うつといった症状に効果があります。

副作用:活発なBPSD、例えば興奮やイライラ感、落ち着きのなさが出現する事がある。食欲低下が起きることもある。また、長期服用により徐脈や不整脈が現れる場合があります。半減期が長いので、中止してもすぐに症状が改善しないこともある。

medical.eisai.jp

2、メマンチン(メマリー)

脳内のグルタミン酸の濃度上昇を改善させる効果があります。

効果:BPSDのうち、易怒性、興奮、攻撃性といった激しい症状を軽減

副作用:傾眠、不活発など

www.interq.or.jp

3、抑肝散

抑肝散は7種類の生薬からの抽出物で、どの成分が効果があるかわかっていません。

神経症不眠症、小児なき、に対する治療薬として厚生労働省から承認されているものです。

BPSDのうち比較的激しいものに効果があるとされていますが、エビデンスは不十分。

副作用:高ナトリウム血症、低カリウム血症などがあり、その結果として筋力低下などが起きる事がある。

www.rad-ar.or.jp

 

認知症薬を開始した当初の症状の有無を確認し、その症状がない場合には一旦薬をやめることも必要になります。そこから、リハビリテーションなど非薬物的アプローチを試みることも可能です。

 

事例紹介

『笑顔で楽しく認知リハビリテーション』を実施した事例もありますので、一部ポイントのみを紹介していきます。

また、内容の動画も「日々のくらしにつなげる認知症リハビリテーション実践ガイド」で記載されているURLから見ることもできますので、気になる方は、是非ともご購入いただくのも良いかと思います。

 

 ケース1 食事はほとんど手がつけられずADL全介助

食事はほとんど手をつけず、寝返り以外は全介助ですが、できないわけではない様子です。

HDS-R:5点 スタッフには疑心暗鬼で不安な様子。家族の面会は多く、信頼している様子。

目標:施設に慣れていただき、精神面の安定と意欲の向上 食事量の確保

どういった関わりも持ったか

・担当セラピストにより、毎朝伺い、目線を下げて挨拶や傾聴。

・嗜好調査

・疑心暗鬼であるため、未開封のパンなどを自分の手で開けてもらう工夫

・信頼している家族による、食事介助

・味覚の調査(血液データの確認)

・活動量の増加や食への関心による空腹の促し

・多職種による統一した関わりと情報共有

結果

・食事摂取量が安定し、自力摂取を行うようになった。

・1日中ベッドで過ごしていたのが、自分で起き上がり、歩行器歩行訓練も行えるまでになった。

・笑顔が見られるようになり、自発的なコミュニケーションが現れた。

ケース2 初回介入時に成果が上がらず、拒否が強くなってしまった事例

教師だったこともあり、最初に提供した計算課題が簡単すぎて、プライドを傷つけることになり、集団生活にも不安が生じ、活動や介助、リハビリテーションプログラムの拒否にもつながってしまいました。

MMSE:16点 ADLはほぼ自立 帰宅願望強く、全般に拒否が多い。また、暴言・暴力まであり。

どういった関わりを持ったか

・生活歴、趣味などを再調査

毎日新聞を読んでいることや、花や盆栽が趣味であること。その話題について触れ、コミュニケーションを多く取る。

・教師であったことから呼び方を「先生」とした。

・社会の先生であったことから、課題を社会の問題で、簡単すぎず難しすぎない問題に逐次評価し実施。

・表情を見ながら、気分が乗っているときに認知リハビリを実施。また、一人の時間が好きな時もあり、静かな場所でも実施

結果

リハビリテーションプログラムに意欲的に参加され、花や盆栽への興味も出てきた。

音楽療法は最前列で楽しまれ、他の利用者やスタッフとの交流機会も増えた。

 

 ケース3 できることは最大限に発揮し、できないことは期待しない 物的環境整備と家族の気持ちの変化で在宅生活が継続できている事例

自宅での生活が難しくなり、老健への入所。

身体機能:歌詞筋力の低下が見られ、転倒の危険性高く、常に見守りが必要。

認知機能面:短期記銘力、見当識、解決能力の低下により、在宅生活で障害となる。

日常生活:徘徊・異食あり。スーパーにお金も持たずに買い物をする。家事は行うも不十分であり、家族への負担となっている。

家族の対応:本人を抑制するような貼紙。ストレスも大きくなっている状態。

どういった関わりも持ったか

・在宅復帰を目標とし、本人には残存能力の活用、家族にはできないことは期待しない、できることを継続できる環境づくりが必要であることを説明。

・筋力強化による歩行能力の向上

日常生活動作の行える部分の評価とできない部分のみ職員が介助を行う。

・BPSDの起こる原因の理解→徘徊は「夕食を作らないと」という主婦の責任感から

・家族への説明

・多職種での「できること」「できないこと」の情報共有

・自宅の環境調整→仏壇にお参りするため電気式のロウソクに変更

・洗濯物は見えない位置にすることで、本人が自分で取り込むことを防ぐ

・家事はコップだけシンクに残しておき、コップだけを洗える環境にしておく。

結果

・在宅復帰が可能となり、本人家族のストレスも軽減した。

ショートステイデイケアを活用し、在宅生活を継続。

 

3つの事例を紹介しました。

共通して大事なことは

①アセスメントを十分すぎるほどに行う。

②個人個人のペースに合わせて、楽しくプログラムを行う。

③多職種連携で共通認識を持ち、全体で取り組む。

この3つが認知症短期集中リハビリテーションプログラムを行う上で重要なことだと思います。

その人個人個人に合わせて、時には環境の工夫や家族への理解・協力、そしてなにより、その方に関わる全員が一致団結して取り組んでいくことが必要だと思います。一人ではできません。皆で力を合わせて、その人らしい生活ができるようにリハビリテーションを行っていくことが大切だと改めて感じました。

 

全て「日々のくらしにつなげる認知症リハビリテーション実践ガイド 」から参考にしています。(本の最終ページに事例の動画へのアクセスURLとパスワードもあります。)

 

 

認知症短期集中リハビリテーション実施加算は老健がメインですので、老健について知りたい方は、以下の記事も参考にしていただけると嬉しいです!

www.rabichange.com

 

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