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理学療法士のoutputブログ

理学療法士がエビデンスについて考えてみた(“EBPT”か“経験則”か)

何を根拠にリハビリをしているのだろうか?

エビデンスは何?」「EBPTでやらないと」「根拠を示していく為にデータを集めなさい」など、そんな事を耳にするようになって、10年以上。

 

改めて「エビデンス」について考えたいと思います。

 

 

 

エビデンス(evidense based)

「信頼性の高い臨床研究による実証結果」であり「科学的根拠」

 

医療の業界ではEBM(evidense based medicine)

「科学的根拠にもとづいた医療」となります。

 

EBPT(evidense-based physical therapy)とは

「根拠に基づいた理学療法

 

言葉について詳しくは日本理学療法士学会HPへ

網羅していますので、こちらをご参照ください。

 

jspt.japanpt.or.jp

 

エビデンスは本当に必要なのか?

何を根拠にリハビリを提供していますか?

エビデンスを見なくとも、今までの個人的な知識と経験があるから、それに基づいてやる方が良いんだ。それに一人一人違うし、一般的な治療が当てはまる人は少ないんだよ。結局は評価を確実にして、自分のやり方を試すしかないんだよ。」

なんていう意見も聞かれます。というか、そう思っている理学療法士は多いように感じます。

 

ある意味

職人みたいに思っている専門職が多く見られることは、実際にあると思います。

 

少しエビデンスとは話は逸れますが、

理学療法の基本的な流れを考えてみます。

 

(患者を)評価する

プログラムを立案する

プログラムに基づき治療する

再評価する

プログラムを立案する

 

の繰り返しです。

 

例えば、脳梗塞を発症した患者様がいると

学生時や1〜2年目のうちのやり方としては、

 

まずは評価として

・全身の運動麻痺の程度の評価をする

・全身の感覚検査をする

・全身の関節可動域を測定する

・全身の筋力を測定する

高次脳機能障害の検査をする

などなど、必要に応じてバランスの検査をしたり、その他評価項目は色々と行います。

 

そこから、問題点を抽出し、

運動麻痺があれば運動麻痺の訓練をしたり、

筋力が弱ければ筋力訓練をしたりします。

 

ある一定の期間(1週間、1ヶ月など)、訓練を実施後に、

再評価を行います。

 

それがだいたい理学療法士になってから3年目以降の慣れてくる時期には、

疾患と動作から問題箇所を予測し、訓練をしながら評価を行う。

といった「評価」と「治療」が同時進行となるわけです。

 

過去の同様の事例を参考にする事が多く、

(例:脳梗塞で、麻痺側へ傾くのか。前に同じような人いたな荷重訓練しとこうか)

効率化の為にも、だんだんと細かな評価はおろそかになり、経験に頼っていきます。

 それが経験によるリハビリです。

こんな書き方ですが、別に悪いやり方とは思っていません。 

経験則で行うとはどういうことか。

経験則はかなり大事だと思います。

なぜなら、限られた時間でしかリハビリは行えないからです。

 

実際の現場で本当に細かく評価しようとすると

評価だけで治療時間を全て使ってしまい、患者様からは「リハビリをしてもらっていない」というクレームに繋がりかねません。

 

より早く、より効果的にプロとして行うならば、自分の今までの経験に基づいて行う事が、もっとも効率的だと考えます。

 

先述した理学療法士学会のHP 「EBPT]の用語説明として以下のことが記載されています。

理学療法の臨床活動において,評価や治療の方法などを選択することを臨床判断(clinical decision making)といいます.このような理学療法士による臨床判断を“経験則”だけに基づいて行うのではなく,①基本的な理論,②理学療法士の臨床能力や臨床経験,③患者さんの意向や価値観とともに,④質の高い臨床研究による検証結果であるエビデンス(evidence)“も”含めて行うことによって,患者さんの臨床状況に即した安全で効果的な理学療法を実践するための行動様式のことを“根拠に基づいた理学療法(Evidence-based Physical Therapy,EBPT)”と呼びます.

日本理学療法士学会 EBPT用語集内 EBPT欄より一部抜粋

 

と、

“経験則”だけに基づいて行うのではなく

ということは裏を返せば、「経験則も使って」という事になります。

だから“経験”も大事だよ

と私は思います。

 

でも、経験だけではダメです。それは、人、特有の心理的に弱い部分である

 

「思い込みなどの、認知バイアスがあるからだと考えます。

 

経験則では「認知バイアス」が邪魔をする。

人は事実と異なることでも、良いように解釈してしまう。

客観的に一番みえないのが自分です。

認知バイアス」についてわかりやすくまとめてくれているサイト様がありましたので、貼っておきます。

no-mark.jp

 この様々な「認知バイアス」があるからこそ、たまたま結果が良かったことを、正確な評価も行わず、過程や根拠をないがしろにしてしまい、自分のやり方を正しいと思い、上手くいかなかったら患者様がやる気がなかったなどと言い訳をしてしまう。

さらには自分が正しいと思う情報だけを集め、正当化してしまう。

何より極め付けは、

できない人ほど、自己評価が高い事にあります。(ダニング=クルーガー効果)

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https://no-mark.jp/liveescape/brainpower/bias.html より ダニング=クルーガー効果

 

 

こうはならない為にも、「認知バイアス」を理解し、客観的に自分のやっていることを見ること

そして、客観的にみて根拠のあるリハビリプログラムを立案し、実践する事が大事だと思います。

 

でもEBPTってどうやって取り組めば良いのか?

まずはガイドラインを使うこと!

EBPTについての書籍はたくさん出ていますが、

 

まずは理学療法士学会のガイドラインを見る事から始めましょう。

 

無料でホームページで公開されています。

jspt.japanpt.or.jp

 

データを集め、エビデンスを作る事。

 

一つの症例データでも、全国でたくさん集まれば、それは信頼度の高い研究になっていきます。

 

EBPTを作っていく事も立派な理学療法士の使命だと思います。

 

エビデンスと政治

 

我々、理学療法士にとって重要な事が、政治との絡みです。

 

リハビリの大半は、医療保険介護保険費用、つまりは国の財政に大きく関わります。つまりは国がお金を出してくれるかどうなのかが、重要です。

 

国もバカではありませんので、意味ないものにはお金を出してくれません。高齢化に伴い、年々増えている医療費を削減したいというのは、しょうがないことでもあります。

 

理学療法士協会でも厚労省の方から、

科学的根拠を示せと再三言われているのは確かです。

「良くなった」だけでは通じません。「何故良くなったのか?根拠は何なのか?」が強く求められています。

 

アメリカの保険会社のデータにこんなのがあります。

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One-to-one Therapy Is Not Superior to Group or Home-Based Therapy After Total Knee Arthroplasty:2013

これは人工膝関節術後、

・電話連絡によるホームプログラム施工群

・集団でのトレーニング群

・マンツーマンでの理学療法を受けた群

での1年後までの追跡調査であり

 

・膝関節のバッテリー評価

・変形性膝(股)関節症の方用のQOL評価

・6分間歩行距離

について調査しました。

・電話連絡によるホームプログラム施工群・集団でのトレーニング群・マンツーマンでの理学療法を受けた群の3つにおいての評価結果は

有意差はなかった。という結果でした。

 

この結果から、

 

人工膝関節全置換術後には

単価の高いマンツーマンより、

集団や電話での指導で良いよねって事になります。

 

理学療法の必要性を示せるデータを出さないと、どんどん単価は下げられる。

「意味のない事にお金は出せない!」ということは当たり前といえば当たり前ではありますが、、、

 

そんな厳しい時代になってきているので、

エビデンスはその為にも重要です。

 質の高い医療を提供していますよ!っていう為にも、エビデンスに基づく理学療法を提供しなければならないと考えます。

 

エビデンスの注意点

 

一つ注意して欲しいのは、エビデンスに基づいて行ったからと言って、

全てはうまくいかないことは念頭に置かなくてはいけません。

 

その理由として3点、挙げられます。

 

1点目

どんなデータでも分散が伴い、それに当てはまらない方もいてるということです。

「どんなに素晴らしいやり方でも、7割くらいの人にしか当てはまらず、残り3割には効果がない」

くらいに思っていた方が良いと思います。

必ず例外は存在することは頭に入れておかなければならない。

 

2点目

集めているデータは純粋な方のみ使っている事が多く、ノイズが取り除かれている事があります。

結果を綺麗に出す為にも純粋な疾患だけを集めて行う。しかし、大抵の高齢者は一つの疾患では収まらない。脳梗塞+変形性膝関節症や骨折+呼吸器障害などであり、それ通りにはいかない事もある。

 

3点目

エビデンス自体がまだまだ少ない。

データ量が少なく、効果があるかもしれないし、ないかもしれない。長期の結果が不明な事も多い。その為にも何が最善かが結果としてはわからない事もある。

 

 大事なことは

何よりも大事なことは評価であると思います。

客観的に数値化した評価は絶対であり、治療効果があったのかどうかは評価でわかります。

これが専門職でないとできない唯一のことであると思います。

まとめ

EBPTの進め方は,①患者に関する臨床的疑問(クリニカルクエスチョン)の定式化,②患者の臨床的疑問に関連した情報の検索・収集,③収集した情報の批判的吟味,④批判的吟味を行った情報の患者への適用の検討,⑤実施したEBPTプロセスの評価という5段階のステップとなります.多忙な臨床現場で効率よくEBPTを実践するためには,この5つのステップの進め方を正しく理解するとともに,このEBPT用語集にリストアップされたような臨床疫学的な概念や研究方法論についての理解を深めていくことが大切です.

日本理学療法士学会 EBPT用語集内 EBPT欄より一部抜粋

 

自分の経験とエビデンス(科学的根拠)に基づき、バイアスを除外した客観的評価を行う事が、

正しい理学療法だと私は考えます。

 

自分でもまだまだできていませんが、理想に近づけるように頑張ってリハビリを行っていきたいと思います!!

 

本日もここまでお読みいただき有難うございました。

またのお越しをお待ちしております。

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