エビデンスの意味とは?EBM・EBPTって?学び、情報を収集し、活用せよ!!(②収集)
エビデンスを学んで理解し、うまく情報を集め、活用することで、今よりもずっとより良い医療が提供できると私は考えます。EBM・EBPTについて
3つのセクションで行う第1回目は「学ぶ」でした。
三段跳びであれば、ステップにあたる
第2回目は「情報収集」です。
「エビデンス」をどうやって調べるか。
あなたはエビデンスを、どれだけ検索できますか?
目次
エビデンスの質
論文を何でもかんでも参考にすれば良いわけではありません。
論文の中の研究手法にも様々な種類があります。1人の対象者に対し、介入前後を比較した事例研究から、何万人と無作為に選び出して介入した方と介入していなかった方を比較する無作為比較試験
まずは論文における、研究デザインの種類を見ていきます。
種類は以下となり、順にエビデンスの質は高くなっていきます
①専門家の意見(研究データの批判的吟味を欠いたもの)
②事例集積研究
④準実験
⑤1つ以上のランダム化比較試験(RCT)
そこに加えて一番質が高いとされるものが
⑥RCTの系統的レビュー(メタアナリシス)
1つずつ見ていきましょう。
①専門家の意見(研究データの批判的吟味を欠いたもの)
これは最も質の低いエビデンスにあたります。経験に基づいた主観的な意見のことを言います。
どれだけ権威があり、経験が臨床景観が豊富であろうと、データのない物には疑ってみないといけません。
人間は誰しもバイアスがかかり、事実とはかけ離れたものを信じてしまっている可能性があるからです。
特に確証バイアスは自分の都合の良い情報ばかりを意識的あるいは無意識的に選り好みしてしまいます。
記憶バイアスにより、都合の良い記憶(良くなった事例だけで悪くなったものは忘れる)が蓄積され、関連性の錯誤により、誤った因果関係を想定してしまう事が挙げられます。
例えばの話をします。(例ですので完全なるフィクションです)
私は長年、理学療法士で患者を見てきた。
肩こりで悩む患者の共通点を見つけた。
それは背筋の弱さだ。
共通して背筋が年齢の平均値より弱い。
肩こりの患者に数週間、背筋のみを鍛えれば、肩こりは皆よくなるのが、何よりの証拠だ。
なんて事を言う方がいたとします。
背筋の弱さ→肩こり と言う因果関係を示していますが、
・全身の筋力の低下なのかもしれません。
・運動習慣がない事なのかもしれません。
・ライフスタイルのせいなのかもしれません。
・ストレスによる姿勢の変化なのかもしれません。
背筋だけに着目して因果関係を示そうとしていますが、その他の要因を見ていません。
ただし、これは最も臨床家が陥りやすい罠の一つであり、たまたまの要因を全てだと言い切ってしまうのです。これが関連性の錯誤になります。
また、背筋トレーニングのみを行って改善したとありますが、
・健康に意識した患者のライフスタイルは大きく変わったかもしれません。
・プラセボの効果もあるかもしれません。
・ただ、時間の経過と共によくなっただけかもしれません。
・他に実は何かしていたのかもしれません。
このように、どれだけ経験豊富でも、データがないと、真実は見えません。
ですので、エビデンスの質は一番低くなります。
②事例集積研究
事例研究(case study)を集めたもの、これもまた質の低い研究になります。事例研究は①と同様にバイアスがかかりやすく、それをいくら集めたところでデータとは呼べないからです。行ったこと以外の要因が結果に影響を与える可能性が事例研究では否定できないからです。このようにその他の要因が結果に影響を及ぼす事を交絡と言います。第三の要因が絡むため、因果関係を示せないのです。この為に、何百と事例を集めたとしてもこの交絡がある為にデータにはなりません。
その為にエビデンスの質としては低くなります。
③観察研究(コホート研究 ケース・コントロール研究)
観察研究とは研究者が研究参加者に直接的に介入しない事が特徴です。
コホート研究
例えば、現在運動習慣のある群とない群にわけ、追跡調査し、認知症罹患率を比較するような研究です。
タバコと肺がんの研究はこうですね。タバコを長年にわたって吸わせるような実験は無いと思います。
ケース・コントロール研究
コホート研究とは逆になり、例えば認知症の人と認知症でない人の過去を調べ、その違いから認知症に影響を与えているものは何かというものを調査する研究です。
肺がんであれば、そうで無い人と喫煙率の差があるか調べるといったことになります。
これらの研究は直接介入しないのでバイアスはかかりにくいように見えます。
しかし、発見された要因と結果とには相関関係があるかもしれませんが、他の要因では無い事が言い切れない為に、因果関係があるとは言い難くなります。
その為にエビデンスの質としては低い部類になっています。
④準実験
ランダム化していない臨床実験をまとめて準実験と呼びます。
前後比較研究
参加者の一群に向かって介入を行い、その前後を比較する研究を前後比較研究と言います。
例えば100名の参加者を募り、FFD(指床間距離)を下腿三頭筋の静的ストレッチを2分間行う前後での比較を行ったとします。
前後で有意差があれば、効果があると言えるように思います。しかし、研究に参加するという意欲などの性格面や、もともと柔らかいなど自信のある人、他にも何らかの共通する傾向があるのかもしれません。
また観察者期待効果(ホーソン効果)によって、見られている意識によりパフォーマンスの向上があるのかもしれません。
これらの懸念は拭きれないのです。
不等価2群比較デザイン
参加者の希望によって2群にわけ、希望した群に介入を行うような研究デザイン。
これも前後比較試験と同様に、様々な見えない要因が絡んできてしまいます。
その為に、エビデンスの質としてはやや低くなってしまいます。
⑤1つ以上のランダム化比較試験(RCT)
ランダム化比較試験とは研究参加者をランダムに2群にわけ、一方に介入を行い、他方には何も行わないか、別の比較対象とする介入を行う研究デザインです。
両群の変化を比較することで、介入の結果であるとかなり高い確信を持って結論する事ができます。
ここで何名を対象にするか(サンプルサイズ)は重要な部分であり、多ければ多いほど良いというわけではありません。
介入によって生じる「差」、つまりは効果が小さいと予想されるときには、その効果を検出する為に大きなサンプルサイズを必要とします。サンプルが小さいとサンプル間の誤差に効果が埋もれてしまうからです。逆に根拠もなく大きなサンプルを使うと、効果がないのに「有意差あり」の結論が出てしまいます。
このサンプルサイズを計算するには
①予想される効果量
②有意水準(α=0.01または0.05 が通例)
③検出力(0.8または0.9 その確率を80%にするか90%にするかあたりで問題ない)
この3つからサンプルサイズは計算されます。
研究で統計を用いる方は
統計解析ソフト Stata 16 | ライトストーン とか使ってるんですかね。
あとランダム化では研究者も誰が介入を行ったか分からないようにする二重盲検化などを行い、ホーソン効果やその他バイアスの影響を極力減らしていく手法もあります。
エビデンスの質としては高くなります。ただし一つの結果として、それだけを参考にするのは間違っている可能性も否めません。
⑥RCTの系統的レビュー(メタアナリシス)
様々な研究者によって行われたRCTなどの質の高い研究を持ち寄って統合するための統計的手法を、メタアナリシスと呼びます。
メタアナリスでは単一ではサンプルが小さく有効性が示なくても、統合することで有効性が示せることもあります。
しかし、一時研究で効果の無いものは公表されずにあることも多い為に、効果のある結果だけを集めた場合には、間違った結果が出ることもあります。その辺も注意しないといけない部分ではあります。
現在、最も質の高いエビデンスにあたります。
研究の手法で質が決まる
研究の方法で質が決まるということは、どれだけバイアスが取り除かれているかということです。EBM・EBPTにおいてはRCTやRCTの系統的レビューによって得られた知見を用いるのがベストです。
しかし、これらの報告はまだまだ少なく、目の前の方と重なるかと言われると、そのほうが珍しいかもしれません。どうやって使うかは、次回に書いていきたいと思います。
また、研究されている方で、事例研究だから意味ないとかではありません。事例研究の報告が重なれば、そこから準実験やRCTへとつながります。
臨床での研究が、これからのエビデンスを作っていくことは間違いありません。意味のない研究など、ないと思いますので、誤解のないようにお願いいたします。
さあ調べてみよう
研究の種類、エビデンスの質がわかったところで、実際の検索方法について説明していきます。
私が学生の頃は図書館の雑誌を探して、コピーしたものです。図書館のコピー機は10円だったのに対し、近くの小さな本屋は5円であり、永遠とコピーして店主ときまづい感じであった事を思い出します。
Google翻訳も訳わからん言葉を並べて、ブン殴ってやろうかと何度も思いましたが(冗談ですGoogle先生)、今やかなりの精度であり、英文献も探しやすくなりました。(英語の文献は日本語の何十倍の量)
余談は長くなりましたが、ネットで無料で調べられるもので、ある程度は十分かと思います。
それらを紹介していきたいと思います。
コクラン共同計画
エビデンスを検索する際にまず最初に当たるべきはコクラン共同計画になります。
信頼性の高いRCTなどの系統的レビューが検索できます。
全文見ようとすれば有料になりますが、アブストラクトだけなら無料であり、大まかに把握することができます。
日本語で翻訳しているのも一部あったりします。
ガイドラインも有用です
以下について載っています。(2011年なのでちょっと古い 今年第2版できるみたい)
1、背部痛
2、腰椎椎間板ヘルニア
3、膝前十字靭帯損傷
4、肩関節周囲炎
5、変形性膝関節症
6、脳卒中
7、脊髄損傷
8、パーキンソン病
9、脳性麻痺
10、糖尿病
11、心大血管疾患
13、身体的虚弱(高齢者)
14、下肢切断
15、地域理学療法
あと厚生労働省委託事業であるMindsには様々なガイドラインが載っています。
無料です。さらに、一般向けのもあるので、大変わかりやすく説明もしやすいですね。
個々の文献も調べよう
英文献はPub Med
使い方は
■図書館>データベース利用ガイド>PubMed利用ガイドを参考にしてください。
また、PT協会が解説付き英語論文翻訳を出してくれていたりします(神)
日本の論文ならciniiやGoogle Scholar
https://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja(GoogleScholar)
これらを利用する場合の注意点は、自身で論文の批判的吟味を必要とする事であります。
批判的吟味の評価項目は以下になります。
・研究手法は何か
・参加者に偏りはないか
・サンプルサイズは適切か
・参加者はランダムに割り振られているか
・ランダム割り付けは隠匿されているか
・盲検化されているか
・大きな参加者の脱落はないか
・すべての参加者は最初に割り付けられた群のままで分析されていたか(ITT解析)
・効果量と信頼区間が適切に報告されているか
・データに沿った整合性のある考察がされているか
また、研究による利益関係も見とく必要がありますね。(例えばの話、乳製品の会社が乳製品は体にいいよってデータを出してても、よくない結果が出た場合は公表していない可能性があり)
医師の意見情報
個人的意見はバイアスによりエビデンスの質は低いですが、参考になるものもやはり多いのは事実です。全てを鵜呑みにするのではなく、情報の一つとして取り入れることも良いかと思います。
というわけで、医師の情報サイト「メディカルノート」と「メドレー」
英語検索の方法
Google検索で興味のある単語にevidenceをつける。
例えば[stretch evidence]と調べます。
検索の1番目には被引用件数258件 2012年のものが出てきました。
CURRENT CONCEPTS IN MUSCLE STRETCHING FOR EXERCISE AND REHABILITATION
システマティックレビューの文献ですね。
2番目に2020年1月15日のものが出てきました
Quite a Stretch: Stretching Hype Debunked
こちらはすごいまとめたやつですね!なんと分類していいのかわかりませんが、ペインサイエンスのサイトだということはわかりました。(ありがとうGoogle翻訳!)
被引用件数が多いものを一つの目安としますが、新しい情報はその点が少なくなるので、難しいところです。検索上位かつできる限り年代の新しい物を選ぶのが良いかもしれません。
ちなみに日本語で[ストレッチ エビデンス]と検索すると
1番目2012年の市橋先生の理学療法学に載った論文のpdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/41/8/41_KJ00009647372/_pdf
2番目はストレッチ専門店Dr.ストレッチのサイト
うーん日本語検索って、、、。
(あくまで一例であり、全てではなくたまたまな結果です。一概には言えませんが、日本語の情報よりは英語検索の方が信頼性が上がると思います。)
最後に
検索手段はこの他にもあり、病院や学校などでは有料のものも手に入れられるかもしれません。使わない手はないので、一度確認してみましょう。
次回はいよいよEBM・EBPTの実際の活用方法になります。
待てない方はこちらをみてください。
「予告」ここ↑に書いてる内容の事を主に書くだけなので、次回は大した内容にはなりませんので悪しからず。
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